慶応義塾大学川崎キャンパス。   そのO号棟。   ここが慶応大学電気自動車研究室。   室内は思ったより広い。

研究室を率いる清水浩教授。   清水先生が開発したこのルシオールにも、10年前に乗っている。   それから10年たって、完成したのがこのクルマ“エリーカ”。   相当の迫力。

後席ドアーはガルウイング。   全長5100mm, 全幅1900mm, 重量2400kg。   空力は0.2を切っている。ラジエーターがなく、床下に何もないのが効いている。   フロントウィンドー。これを見ただけでも、最大限に空力を配慮してデザインしている事が分かる。とにかく、いかに効率良く走るかを追求している。

あらゆるところに空力への配慮が。   車輪は8つあるが、4輪車のひとつの車輪を2分割して縦位置に配置したと思えばよい(タンデムホイール)。ひとつの車輪を2つに分けても、そこへかかる重力が1/2づつになれば転がり抵抗は同じだそうです。   ひとつひとつの車輪の中に、それぞれモーターが入っている。つまり8輪駆動。 ひとつのモーターが100馬力なので800馬力というモンスター。   このホイールの中にモーターが入っている。曲がる時の内輪と外輪の回転数の違いを 調整する機構(デファレンシャルギアー)も必要ない。

室内もきちんとデザインされている。当たり前だが、床は見事なまでに平ら。   シートも高機能の新素材が使われている。   この完全に平らな床は実に気持ちが良い。。   運転席のパネルには様々な情報が表示される。   Dのボタンを押せば、後はアクセルを踏んで動き出すだけ。

この角度から見ると、シトロエンDSを彷彿とさせる。   最高速度370キロを誇る。   このエンブレムはやり過ぎか。   研究室付属のガレージ。

女子生徒(研究員)もいる。   ガレージの奥にはもう1台のエリーカ。これは最高速を目指してのもの。 ボクの乗ったエリーカは最大加速を目指してのもの。  

ガレージの中には、清水先生の究極の目標、「ひとり乗り、自動運転」の試作車がありました。


ちょうど10年前に、清水先生が造った電気自動車に乗りました。
慶応大学の藤沢キャンパスでした。ルシオール(フランス語で蛍)という、前後に二人で乗るタンデムのクルマでした。その時の試乗記の一部です。
「自分を乗せたEV(Electric Vehicle)がスピードを出せば出すほど、そのEVに乗っている自分の心の中のエンジンが回転を上げていくのが、はっきりとわかるのである。細かい説明ははぶくが、私が乗った電気自動車は、構造上、重心がとてつもなく低い。だから操縦性能もとても高い」ルシオールが搭載していた電池は昔ながらの鉛電池でした。それでも驚くほどの性能でした。
今回のエリーカはグッと高性能になったリチウム電池です。(これは完全リサイクルが可能です)そのスタイルも、蛍とは打って変わって迫力のある大型車になりました。
期待に胸を膨らませながら運転席に座りました。
運転した感想をひとことで言うと「すごいッ!」に尽きます。
清水先生が口癖のように言う「大切なのは加速感です」が実感出来ます。
停止状態から、スロットルを床まで踏みつけると、“一直線の加速感”に全身が包まれます。加速―Gが、グラフで表しても正に一直線の右肩上がりなのです。
この感覚は、言葉であらわすのがとても難しいのですが、とにかく内燃機関の加速感とは全く違うものです。そして800馬力の物凄い加速は、軽い貧血状態になるほどです。
発進の時に、スロットルを床まで踏みつけても、8輪駆動の恩恵でホイールがスピンする気配もありません。
リチウム電池は二重構造になった床の中に収められています。
クルマのフロアーパネルの下に電池が敷き詰められていると考えて下さい。
ですから、異常なくらい重心が低いのです。コーナリングがとても気持ち良く、ロールは、全くなしと言ってもいいぐらいです。山道を走ってもとても快適でしょう。
更に、最も重要なのがこのクルマの燃費効率です。
同じ大きさの内燃機関エンジンのクルマと比べると、必要燃料はなんと1/4です。
電気は発電所で作られます。そこで、石炭や天然ガス、重油を燃やします。
そこからエンドユーザーのところまで電気は送られて、その電力がこのクルマに充電されて走ります。送電ロスなど全てを計算に入れても、クルマについているエンジンで燃料を爆発させて走るよりも4倍も効率がいいのです。
今もてはやされている燃料電池車では、水素スタンドがガソリンスタンドなみに整備されなければなりません。しかも水素は爆発しやすい危険なものです。
電気自動車は家庭用のACからも充電出来ます。清水先生のお話だと、このエリーカで1キロ走行するための電気代は1円だそうです。
それから、清水先生はふれませんでしたが、エリーカのブレーキフィールは素晴らしいです。ギュッと、絞り込むように確実に効きます。もちろんこのブレーキは、止まる時のエネルギーを電池に戻す回生ブレーキです。
ここまできている電気自動車を、一日も早く実用化して欲しいと、心から思います。

 

後日、研究室のホームページを覗いてみたら、
今年のクリスマスに200台を販売する予定だそうです。
お値段は¥30、000,000ー

マーケットは全世界ですから、完売間違いなしでしょう。

 




 

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